朝職場に着くと、朝から利用者さんが。
主訴は「どうしてレンタルの会員証を作ることができないのか」ということ。
彼の主張を整理すると・・・
彼はセンターにサービスがつながる前は街をさまよっていたけど、ひょんなところから社協につながり、そこからセンターでの支援が始まることに。4月に移転してからは正式につながることになったものの、家庭での問題は深みにはまっていくことに。
そんな中、彼が父親に「どうしてレンタルの会員証を作れないのか?」と迫ったところ、父からは「お前がお仕事をしていないからだよ」と答え、さらに「お仕事をするようになったら作りに行こうな」と答えをもらったとのこと。
そして現在、一般的には「仕事」とは言えない作業をやりながら、彼にとっては「仕事をしている」と認識し、「仕事をしているから、会員証を作りに行こう」としたところ、店員から作れないと言われ、父親も作りに行かないため我慢が限界に達し、さらに「なぜ作れないのか」を迫ったところ、父親からは「じゃセンターの職員と相談して、行こう」と返事。そこで彼がセンターに来て「なぜ僕は作れないの?」と訴えることに。
彼の社会性としての能力があるかどうかは別として、彼の主張としては筋が通っています。かと言ってこっちで「そうだね、じゃ行こうか」とも言えない状態。理由は経済的な問題、もう1つ付け加えるのであればやはり社会能力としての問題。彼がここでの作業でもらえるお金は数千円程度。その中で彼の思い通りにできるかどうかというのは難しいところ。
しかし一番の問題は、父の発言。
どんなことも答えを先延ばしにし、何かあれば答えを濁してその場を「ごまかす」という父。今までは何とかフォローをしてきた部分もありますが、さすがに今回はフォローできません。彼の主張のほうが正当性がありますから。
正直なところ、彼と出会ったのはよかったのか・・・と考えてしまいます。
もちろん市も知っていることなのですが、社協経由で相談がありこちらが対応した以上、それをなかったものにすることはできませんし、福祉ニーズが必要な彼をそのまま放置することは専門職としてできないことでした。しかし彼はセンターで対応したことで違った意味の「成功体験」をしたために、彼自身の要求も多くなってきました。家庭内でも父と衝突する回数が増え、父の話では「センターに行くようになってから、暴力が増えた」とのこと。でもその根底原因にあるのは、彼に対する父親の姿勢。何かあれば「ごまかし」をし、困った時はセンターに電話。最初は利用に消極的だった父も、今では何かあれば相談の電話をする状態。父親が彼に対するコントロール能力を失い、父親としての統制が取れなくなっていることが問題を大きくしている原因でもあります。
もし彼が自分と出会わなければ・・・何も変わらなかったかもしれません。
逆に彼と出会えたから福祉ニーズに応えられたという部分もあります。そう考えると、彼にとってこの出会いは幸か不幸かどっちなのでしょうか。今日の父親の電話では「今日は自宅に戻りません。外で過ごそうと思います」とのこと。自宅に戻って彼から危害を加えられないようにとのこと。
彼の行く末は・・・地域の中での生活が困難であれば、行きつく先は施設。
それは本人が望まなくても、地域生活ができないのであれば仕方のないこと。それを避けるのも専門職の仕事なのかもしれませんが、あまりにも現状の問題は大きすぎます。彼のサービス利用計画を立てている自分ではありますが・・・自分に対して他害をし、初めは避けていたものの翌日には他に職員に、自分との関係を「面倒だから、仕方なく仲良くする」と言っている彼、それもまた施設入所となれば彼自身で傷口を広げた形に。自分への他害がなければまた方向性は変わったのかもしれませんが、自分に対して不都合なことがあれば暴力で対応することを把握してしまうと、それも今後の方向性に影響を残すことになります。そのことがまかり通るようになれば、地域生活はさらに厳しいものに。父親の「ごまかし対応」も、彼の「他害行為」も、行きつく先は自ずと定められてしまっているのかもしれません。
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