批判があることを覚悟の上で、あえて書きたいと思います。
Yahooニュース「事故直前意識喪失か「薬飲まなかった」6児童死亡クレーン車事故」
栃木県鹿沼市で登校中の小学生の児童6人がクレーン車にはねられ死亡した事故で、運転手の容疑者(26)=自動車運転過失致死容疑で送検=にてんかんの持病があり、県警の調べに対し「(てんかんの)薬を正しく飲まなかった」と供述していることが21日、捜査関係者への取材で分かった。県警は、容疑者が運転中に発作を起こし、事故直前は意識を失っていた可能性があるとみて調べている。
捜査関係者によると、容疑者はてんかんの治療のため定期的に通院していたといい、県警は自宅や車から診察券や薬を押収。県警は目撃証言などから、現場から100メートル以内で容疑者に異変が生じ、運転できなくなった可能性が高いとみている。
てんかんは脳の神経細胞が突如過剰に活動して起こる慢性脳疾患で100人に1人の割合で発症。発作は手のしびれや吐き気、頭痛などの軽いものから、意識を失うものまで個人差があり、患者の約8割は薬で発作をコントロールできる。
道路交通法の施行令で以前は運転免許取得の欠格事項の一つに挙げられていたが、平成14年の改正で、過去に5年以上発作がなく今後発作が起こるおそれがない▽2年の経過観察後、発作が睡眠中に限られ、今後病状悪化のおそれがない-などとする医師の診察があれば、免許を取得できるようになった。
独立行政法人国立病院機構静岡てんかん・神経医療センターの井上有史院長によると、2年以上発作がなかった患者の運転上のリスクは、一般のドライバーと変わらないとする海外の医学文献などが法改正の論拠となっていたという。
一方、「車がなくては生活できないとして、疾患を隠して免許を取得する人もいる」と指摘する関係者もいる。容疑者も普通免許と大型特殊免許を取得後、更新しており、疾患を隠していた可能性が高い。
井上院長は「今回の事故で、てんかん患者に免許を渡すべきではないという議論になってほしくない」としたうえで「薬を飲まなかったり、発作がありながらの運転なら、病気に取り組む姿勢に問題があったといわざるを得ない」と指摘。日本てんかん協会栃木県支部の鈴木勇二事務局長も「患者側も自己申告と自己コントロールが必要。免許を取得できるまでしっかりと治療し、取得したら投薬を怠らないなどの安全確保に努めてほしい」と話した。(産経新聞)
まず大前提として、これは明らかに本人の「過失」です。
いかなる理由があろうとも容疑者本人が負うものであり、それが仮にてんかんの持病があったと言えでも決して責任を免れるものではありません。ハンドルを握れば障害があろうともドライバーであることには変わりなく、ドライバーは責任を持って運転をしなければなりません。事故の理由を病気とするのは、絶対に認められません。ハンドルを握ることを決めた以上は、自己責任を追わなければなりません。
そのことを前提にして・・・ですが、本人の気持ちも痛いほどわかります。
てんかんを持っていることを誰にも言えなかった、てんかんで制限をされたら今までのすべてを失うという思いがあったのだと思います。ですから心情は理解できます。ただ、「心情の理解」と「事故の結果」は一緒にすべきものではありません。重大事故を起こした以上、どんな情状があったとしても許されるものではありません。
「痛いほどわかる」と言うのは、自分が一度「てんかん」と診断されたことがあるからです。
そのことは6年前の自分の書き込みを見てもらえばわかることです。結果的にはてんかんではなく、現在もパニック障害の治療を続けていますが、主治医からは「運転しても構わない」と許可をもらっています。もちろん最初にてんかんと診断した病院では「車の運転はダメです」と言われ、さらに「お酒もダメです」と言われることに。そして以前の職場の上司からは「直接処遇に携わる人間が(てんかんを)持ってたら、絶対にダメ。利用者を守らなきゃいけない立場なのだから・・・」と話していたことがあったため、診断を受けた瞬間、目の前が真っ暗になりました。好きな車の運転ができなくなる、好きなお酒が飲めなくなる、仕事も大きく制限される・・・人生の多くを制限される状況を味わいかけた立場としては、持病を隠したい気持ちと言うのは察することができます。
今の職場では一部の利用者さんには自分の障害のことを話しています。
利用者さんの中には車やバイクで来ている人もおり、時々運転の話になることもあります。その時に自分が利用者さんに言っていることは、「運転はすべて自己責任でやるんだよ」と言うこと。何かあった時に「障害」を理由に罪や制裁を免れることはできない、だからすべてを含めて運転などをするときは「自己責任」のもとでちゃんとやるんだよ、と言うことを話しています。
ですから今回の事故も「自己責任」で処理しなければなりません。
てんかん発作を持っていて、発作の形が俗にいう全般発作(色々なニュースから読み取るには「強直発作」と読み取っています)であることをわかっているならば、そのリスクを回避するのも自分の責任で対処しなければなりません。それは親が負うものでもなく会社が負うものでもなく、事故を起こした本人が負うものです。
ただし、世間が「てんかん」のことをどれだけしっているのか、と言う気持ちもあります。
勤務先では「隠さずにいてくれたら防げたかもしれない」と言っていますが、それはあくまで「事後説明」であり、じゃホントに話したら適切な対応をとってもらえたのか、と言う部分には個人的に疑問を持ちます。おそらくありのままに話したら仕事を外されるでしょうし、今までやったことのない仕事への転職を余儀なくされるでしょう。今まで自分がやっていた仕事を突然奪われ「他の仕事をしなさい」と言われて「はい、わかりました」と素直に聞き入れられる人はいったいどれだけいるでしょうか。少なくとも自分はそれが受け入れられませんでした。受け入れられなかったからこそ、その痛みと言うのがわかるのです。これは実際の当事者でなければ絶対にわからないことだと思います。「薬でコントロールできる」と簡単に書いてありますが、実際にはそんなに簡単なものではないと思います。色々と薬を調節しながら、その人に合う薬を見つけて、合った薬が見つかって初めて「発作のコントロール」になるので、人によっては時間がかかります。ですから、てんかんのことを安易に考えないで欲しいですし、てんかんに対して正しい認識を持ってもらいたいです。報道されていることだけを鵜呑みにしないで、その実態と言うのも知ってもらいたいです。てんかんに対して間違った知識・偏見を持たれないようにするためにも、ここは声を大にして訴えたいです。
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