正しい認識を
先日「何をかこうか忘れちゃった」と書きましたが、思い出しました。
書きたかったのは、生活保護のこと。ちょうどテレビで「生活保護のほうがお金がいい」なんてことを言っていたので、ちょっと誤解があるのかなぁ・・・と思い、取り上げることにしました。
すでに生活保護のことについては、「御岳の山」の時に取り上げているのですが、ここで改めて取り上げたいと思います。色々と改めて書くのも面倒なので、一部を抜粋しながら話していきたいと思います。
日本国憲法第25条には
・すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。という条文です。つまり私達は憲法によって人間的な生活をする権利(生きる権利)が保証され、また国がその為の必要な施策をすることが定められています。
・国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
ところが、もし私達が生存権を脅かされる事態になった時、一体どうすれば良いのか?
特に雇用不安が広がっている現在では、急な派遣切りなどで住むところすら困ってしまうという状況もあります。そこで出てくるのが「生活保護法」です。生活保護法の第1条では、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を実現させるための目的が掲げられています。
生活保護法第1条
「この法律は、日本国憲法第25条に規定する理念に基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行ない、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。」
生活保護法は、憲法第25条に基づき、その人が生きていくために必要な最低限度の国が保障すると共に、その人が再び自立した生活が送れるようにすることを目的としています。そして生活保護を行なうにあたって、4つの基本原理が定められています。
国家責任の原理
日本国憲法でも規定されているように、生活保護法は国の責任において生活困窮者の保護をすることを規定しています。無差別平等の原理
生活困窮にに至った原因を問わず、生活保護の要件を満たせば無差別・無条件で保護を行なうことを規定しています。つまり、生活困窮の原因がリストラによる失業でも、怠惰による生活困難でも、生まれや育ち、性別を関係なく平等に保護を行なうことを意味しています。最低生活保障の原理
日本国憲法でも規定されているように、生きていくために必要な最低限度の生活を保障することを規定しています。保護の補足性の原理
生活保護法で1番重要な原理で、生活保護法では「最低限度の生活」を保障するもので、「最低生活」に足りない分について、生活保護法で保障する規定になっています。また最低生活を維持するために、持っているすべてを最大限活用し、それでも不足する部分について保護をすることになっています。また利用できる他法・他施策(児童福祉法・障害者福祉法・知的障害者福祉法・老人福祉法・母子及び寡婦福祉法など)を使っても最低生活に至らない場合に、生活保護が開始されます。このことからも生活保護法は、生活困窮救済の「最終手段」としての位置付けがあります。
この中で誤解を招きやすいのは、「生活保護になったら全部お金を払ってもらえるのか」ということです。
そのことを説明するのが「保護の補足性の原理」です。生活保護というのは、いろんな法律や制度を使ってもお金がない、あるいはその制度が使えないなど、どんな手だてを使っても生活を継続していくことが困難になった時に初めて使えるものなのです。ですから生活保護を受けるには、さまざまな審査があります。その中の1つが「資力調査(ミーンズテスト)」です。この「資力調査」とは、本当に今現在生活に困窮している状態なのかを調べるため、生活保護を申請した人の貯金や財産などを確認するものです。たとえば貯金がまだあるのに生活保護を利用しようとしても、「貯金がある」ということは現に生活に困っているとは判断されないので、貯金が無くなって初めて生活保護を受けられることになります。また車を持っている場合などは「車を売れば財産が発生する」との考え方から、原則として車(財産)を売却して生活を乗り切りなさい、という判断がされます。
ここで示したのはあくまでも代表的な事例であり、このほかにも収入など事細かに調査され、その上で「本当に保護をしなければならない」と判断されたときに、初めて生活保護を受けることができます。ただし、生活保護が決まればたくさんもらえるのか、と言ったらそうではなく、「生活保護に必要な金額」が支払われます。
この「必要な金額」を計算するのに用いるのが「生活保護基準額表」というものです。
これは毎年改定され、その表を元に「最低生活費」を計算します。そして資力調査で判明した資産(収入充当額と言います)が最低生活費よりも低ければ、そこで初めて生活保護を受けることになります。ただし、生活保護になった時にもらえる金額(扶助額と言います)は「最低生活費-収入充当額」の差額が貰えることになります。
具体的な例を「社会保障の手引」から引用すると、標準的な3人家庭(父・母・子)の場合、最低生活費は約18万円となります。この金額が生活保護を実施するか否かの基準となり、収入充当額が18万円よりも下回った時に生活保護が開始されます。つまり、生活保護を申請しても資産が約20万円あった場合は生活保護は適用されません。また資産が17万円だった時は、最低生活費よりも収入充当額のほうが低いので、生活保護の対象なります。しかし先ほども話したように、生活保護になったから18万円全部もらえるのか、と言ったらそういうわけではなく、「最低生活費18万円-収入充当額17万円=差額1万円」の計算から、最低生活費に不足する1万円が扶助(もらえる)ことになります。この部分を報道されていないため、「生活保護者はお金をたくさんもらっている」と誤解されているのかもしれません。
もちろん生活保護費は税金から賄われています。
そのため、生活保護を不正に受給した場合は保護の廃止や受給金品の返還、場合によっては刑法により処罰されることもあります。ちゃんと制度は「まじめにやっている人が馬鹿を見る」ような法律ではありません。また生活保護を受給すると、さまざまな指導を受けることになり、その指導に従わないと、保護が停止されることがあります。収入を得た場合も、ちゃんと申告しなければやはり保護の停止になることがあります。いずれにしても「生活保護」は最終手段であり、生活保護を受けた時はそれなりの管理がされることになります。だから生活保護が決しておいしいものである、というのは間違っていますので、その部分を誤解しないでもらいたいと思います。
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