ある程度は、想定内
やはり、このニュースは取り上げざるを得ないでしょう。
Yahooニュース「コムスン事業所の新規・更新、2011年末まで認めず」
厚生労働省は6日、グッドウィル・グループ(GWG)の訪問介護大手「コムスン」(東京都港区)の全国の事業所の新規指定と更新を、2011年12月まで行わないよう都道府県に通知した。
2006年4月施行の改正介護保険法により、不正な行為があった事業者による指定・更新を5年にわたり認めないとする規定を適用した。コムスンは、全国8か所の事業所で、雇用していない訪問介護員を勤務しているなどと偽り、介護事業所指定を不正に取得したことが問題とされた。この規定を全国規模で適用するのは初めて。
同省によると、5月末現在、同社の介護事業所は2081事業所(介護予防サービス事業所除く)あるが、同法では不正がなかった事業所も含めて更新が5年間禁じられるため、来年度には1424事業所に減少、最終的には、2011年度に426事業所にまで減る。2081事業所には、訪問介護だけでなく、デイサービスやグループホームなどの事業所も含まれる。サービス利用者は、更新時期まではサービスを受けることができるが、事業所の更新が認められないと、事業所を変えなければならなくなる。(読売新聞)
Yahooニュース「<コムスン>不許可…「現場に影響大きい」利用者ら不安」
訪問介護の最大手の「コムスン」が、介護保険事業から撤退する公算が大きくなった。厚生労働省は6日、コムスンに介護施設の新規開設や更新を今後認めないことを決定。勤務実態の虚偽申請が、2万4000人に及ぶ従業員を抱える業界トップの「崩壊」につながった。介護関係者や全国利用者に衝撃と不安が広がった。
「利用者が多いので、影響は少なくないでしょう」。認知症のお年寄り家族を支える活動を20年以上続ける群馬県前橋市の竹田千恵子さん(82)は、不安の声を上げる。さらに「本来介護は、企業が利潤を追求する対象になじまない。人手が足りないので民間が担うのはやむを得ないが『それぞれの家庭に密着して地道に支えるのが本質』という警鐘を鳴らしている気もします」と、厚生労働省の出した厳しい「決定」を解説してみせた。
介護保険法が施行され、社会福祉協議会が行ってきたヘルパーの仕事の民間化が一気に進められた。コムスンは、地元の人を採用し、急成長してきた経緯がある。「介護保険法に基づき、利益を追求できる枠は一定なのに、収益を無理に増やそうと、介護員の水増し請求を続けてきたのではないでしょうか」と竹田さんは推測する。
「コムスンが行った不正は絶対に許されないが、このままコムスンが介護事業から撤退することになれば、介護の現場に与える影響が大きすぎる」と心配するのは、大谷強・関西学院大教授(社会保障)。「最も被害を受けるのは介護を受ける利用者。慣れたヘルパーの介護を受けられなくなる不安は大きい。コムスンが抱えるケアマネージャーやヘルパーなども失業してしまう」と話した。
介護保険利用者への情報提供を行っている「介護情報ネットワーク協会」(神戸市)の糟谷有彦代表理事は「(コムスンの対応は)悪質だったのである程度は予想できた結果だ」と話す。そのうえで、「コムスン以外の事業所が充実している地域でなく、コムスンに頼ってきた地方への影響は計り知れない。地方を中心に新たな『介護難民』が発生する可能性がある」と指摘した。(毎日新聞)
そして最新のニュースでは、また新たな展開です。
Yahooニュース「コムスンの全事業、グループ連結子会社に譲渡へ」
訪問介護大手「コムスン」(東京都港区)が、厚生労働省から介護事業所の新規指定などが認められなくなった問題で、親会社のグッドウィル・グループ(GWG)は6日、コムスンの全事業を、同グループ連結子会社の施設介護会社、日本シルバーサービス(東京都目黒区)に譲渡する方針を決めたと発表した。
理由についてGWGは、「顧客へのサービス継続と従業員の雇用の確保を最優先するため」としている。
厚生省の指導で、介護事業所の新規指定と更新が5年間認められなくなり、コムスンの事業所は現在の2081事業所から2011年度には426事業所にまで減少する見通しとなった。GWGは、日本シルバーサービスに事業譲渡することで、コムスンの行っていた訪問介護事業はすべて継続できるようになるとしている。(読売新聞)
基本的に、言うことは識者の言っているのと同じです。
ここでも何度か言っているように、別に自分は「社会福祉法人神話」を肯定も否定もしません。ただ、「福祉経営」を考えた時に、以前の全国研修のことを思い出し、福祉においても「法人・施設の経営能力の必要性」は痛感しました。しかしコムスンの行っていることは「福祉経営」ではく「営利戦略」と言った方が正しいでしょう。もちろん今書いたように、福祉の世界でも「経営」をしていくことは必要です。その部分は一般企業と何ら変わることはないと思います。しかし一般企業との違いは「非営利」が目的であることです。「R25」を読んだことのある方は「法人の区分」について眼を通した覚えのある方がいればわかると思いますが(眼を通されてない方は・・・こちらで簡単に説明しています。)「社会福祉法人」は公益性のある非営利法人であるのに対して、コムスンなどを運営する一般企業は「株式会社」に属する。で、株式会社は何に属するかと言えば「非公益性の営利法人」と位置づけることができる。介護保険法の制定では、一部の社会福祉事業に関して株式会社にも参入を認めた経緯がある。しかし自分は最初から「それはヤバいんじゃないの・・・」と思った。そして自分自身も「株式会社」が運営する法人には入社せず、社会福祉法人格のある施設に入社した。どうしても自分の中では「営利目的の企業の運営するサービスなんて、質が落ちていくことが眼に見えている」という偏見の眼があったため、入社しなかった。そして今回の新規申請・更新の不認可、眼に見えていたことが現実のものになった、と言うべきのなのかも知れません。
こう言う言い方をすると「若いくせに古い考え方だ」と言われるかもしれませんが、上記の法人の説明のとおり、「社会福祉法人」と「株式会社」は全く対極の位置に存在する法人格であり、いわば「水と油」のような存在。それを高齢者分野から認めてしまったことによって、高齢者を「利用者」ではなく「顧客」と見なすことになった。別に「お客様」と言う考え方を持つのはいいことだと思う。しかしながら「お客様」ではなく「金づる」と見てしまうと、一気に考え方が変わってしまう。株式会社の第一義的目標は「利益を上げる」ことにある。しかし法律で決まっている介護サービスの場合、提供するサービスの内容によって利用者から得ることのできる金額は決められており、どんなに良いサービスを提供しても、もらえる報酬額は変わらない。そのため、違反行為をしてそれを「利益」としていた点が、今回の最大の問題点であると思う。だから自分は「株式会社に社会福祉事業の参入を一気に認めてしまうのは・・・」と言う考え方を持っていた。
語弊のないように言いますが、もちろんすべての民営(株式会社)がコムスンのようである、とは言いません。
ただ、これは私の思うに「氷山の一角」ではないかと思います。他の事業所も調べていけば、コムスンのような状態が見つかるかもしれません。それに対して社会福祉法人には「公金」も使われるため、必ず監査が入ります。もちろん監査に引っかかることがあれば、内容によっては法人格の取消しも行われるくらい厳しいものです。逆に言えば、厳しい監査の眼が光っているからこそ、法令順守をしているのだと思います。(こう言う言い方も、ちょっと変ですね。コンプライアンスはどの法人格でも当たり前のことなのですから・・・)
書けば書くほど長くなりそうなので、この辺で書き止めますが・・・
やっぱりもう一度、「社会福祉事業のあり方」を考えていくべきだと思います。障害者福祉でも、やっぱり少し見直していくべきなのかなぁ・・・と思います。特にこのblogでは何度も取り上げている「障害者自立支援法」なんかも、ちゃんとチェックしていくべきものではないか、と思います。
(追記;07.06.07)
後付で書くのは「メディアで言ってたからだろう・・・」と言われそうですが・・・それでも付け加えます。
この記事でニュースを3本つけ、最後のニュースが「サービス移譲」のニュースでした。そのニュースを見た瞬間の印象は、「本質が全く変わっていないじゃん」と言うことです。テレビでは「処分逃れ」と批判されていますが、たしかにこの批判は受けるべき批判ではありますが、問題なのはコムスンがこの問題の本質を捉えていない点です。たしかにコムスンのおかげでサービスが行き届いていた事業所があるのは事実ですし、僻地においてもサービスを行っていたとこう部分に関しては評価すべき点です。しかし同時に「悪しき部分」があったのも事実であり、単に利用者・従事者の救済のための安易な業務移譲は、結果として「グッドウィルグループ(GWG)」の本質自体が変わっていないだけのことです。仮に業務移譲をしたとしても、これからサービスの内容や経営方針を劇的に変化していくのかは、また別問題です。重要なのは「コムスン(GWG)の本質そのものの改善」にあると思っています。
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