どうやって、立証するの?
Yahooニュース「男性教諭、2審も無罪…知的障害女児へのわいせつ事件」
小学校の養護学級で、知的障害を持つ女子児童2人にわいせつ行為をしたとして、強制わいせつ罪に問われた千葉県八千代市の男性教諭(46)(休職中)の控訴審判決が15日、東京高裁であった。
裁判長は「犯行日時や場所の証明が十分されていない」と述べ、無罪とした1審・千葉地裁判決を支持し、検察側の控訴を棄却した。
判決は、女児らの「わいせつ被害を受けた」との供述については、供述に一貫性があることなどから、「疑問を差し挟む余地がないようにも思われる」と指摘。しかし、起訴事実となった被害については、「信用性に疑問が残る」とした。
男性教諭は、浦安市の市立小で養護学級の担任をしていた2003年5月と7月、教室内で、当時9歳と11歳の女子児童の胸や陰部を触るなどしたとして起訴された。
判決後、女児の母らが会見し、判決が被害を受けた日時に疑問を示したことについて、「日時の特定が苦手な知的障害の特性に配慮がない。特定できなければ無罪というなら、日常的に被害に遭っていた子どもは泣き寝入りです」と涙をにじませた。
一方、男性教諭の弁護人は、「被害供述の不自然さを指摘した適正な判決。明らかな冤罪(えんざい)で、今後は自白偏重の安易な捜査がなされないように願う」とするコメントを出した。(読売新聞)
たしかに「自白偏重」の捜査は最近の鰓板で批判が多い。だからそれに関してはしっかりと見直していく必要があるだろう。
ただ、今回の場合は「知的障害児」と「健常者」との関係における裁判であり、非常に難しい案件であることは言うまでもない。しかしながら「信用性に疑問が残る」といわれてしまった場合、知的障害者は何を持って「信用性」を担保しなければならないのか?例えば誰か第三者がいる上での出来事であれば、その「第三者」が信用性の担保になるだろうけど、今回の場合は「2人きりの密室」の状態であり、その時の出来事に対して「信用性を持たせる証言」を知的障害児に求めるのは、かなり難しいことだと思う。となれば、やはり証言として優先されてしまうのは「健常者」の証言。もちろん本当に「冤罪」になりうる内容でもあるけど、その一方でお母さんの会見にある「特定できなければ無罪」と言う考えが続いてしまったら、知的障害児者の人権は完全に置き去りにされかねない状態でもある。ましてや今回の場合は「知的障害児」が対象。普通の子どもでも裁判になると「権利能力」の点から不利益になりえることが多いのに、そこに「知的障害」が重なってしまうと、さらに不利益になりかねない。
今年で知的障害の現場に携わって3年目になるけど、正直「知的障害」って難しい。
本当のことを言っていても「違う」と判断されてしまったり、ウソのことを言っても「真実」と判断してしまうことだってある。ただ、1つ思うことは「簡単にはウソはつけない」ということ。今の職場ではこの手法はほとんど使ってないけど、前の職場(知的障害者通所授産施設)では、利用者によってはドスを効かせた対応をしていたこともあった。何か問題を起こしたときに話を聞くけど、どう考えても話のつじつまが合わないと、繰り返し確認をする。その一方で、利用者の言っていることが本当であるのかどうかの「ウラ」を取る。そして揺ぎ無い事実を掴んだ時に、一喝。
「オィ、俺の目を見ろ。俺の目を見て話せ。○○は、本当なのか?」
利用者に凄んで問い詰めると、案外簡単に落ちてしまう。でも本当の場合は、どんなに凄んでも目をそらすことなく、力強く答えるから、そのときは「真実」を語っていると判断している。だから短い経験則から言えば、知的障害をもった人の意見の真意を確認するのは、そんなに難しいことではなく、もしウソを言っていれば体動や言動、声の強弱などが普通の時に比べて微妙に変化する。だから「普段の時」をしっかりと把握していれば、ウソを見破ることは案外簡単なこと。ウソをついているときは、大体声のトーンが下がったり、ちょっと挙動不審な状態になる。「あ、これはいつもの時とはちょっと違うな・・・」と思って追及すれば、結局は本当のことを話す。
今回の事件、どっちが真実を語っているのかはわからないから「どっちがウソを言っている」と言い切ることはできないけど、でも少なくとも「知的障害だから証言の信憑性にかける」と言うような主旨の判決が出てしまうことは、避けなければいけないこと。これが判例として定着してしまったら、知的障害者が絡んだ事件に関してどうやって「立証」をしていくのかを、考えなければいけない。彼らが事件に巻き込まれたとき、一体何を信じればいいのだろうか・・・
今日は「知的障害者にかかわる者」として、このことに関して意見してみました。
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