今回のコトバは「児童相談所」の第3弾。ちょっと「ネタ切れ」や「体がお疲れ」もあるのですが・・・(^_^;)
これまでに「コトバ」においては「児童相談所」と並んで「児童福祉司」についても触れてきました。
私は児童福祉の現場に携わっていないのですが、それでも私の知る限りの知識と認識から記述している内容でありながら、多くの方が「児童福祉司」や「児童相談所」のサーチワードでこのblogに来ている方が多いと思います。
事実、このblogでは「児童福祉司」「児童相談所」について何度か触れてきました。
「児童福祉司」(04.10.16)
「児童福祉司その2」(05.01.09)
「児童相談所」(04.02.05)
「児童相談所その2」(04.02.12)
いずれの回も「児童虐待」に絡んだ内容でサーチしている方がほとんどではないか、と思います。しかし何度も述べているように、児童相談所や児童福祉司は「児童虐待」の問題だけを取り扱っているのではなりません。ちょうど身近な例が出てきましたので、それと絡めながら・・・
Yahooニュース「JR中央線に投石、男性2人けが…児童3人を補導」
27日午後5時40分ごろ、東京都立川市と日野市の境にあるJR中央線・多摩川鉄橋で、東京発大月行き下り快速電車(10両編成)の最後部車両左側の窓ガラスが割れ、乗客の男性2人がガラス片で頭や顔に軽いけがをした。
日野署の調べで、立川市内の小学6年の男子児童3人(いずれも11歳)が、鉄橋から約40メートル離れた多摩川の中州で石を投げて遊んでいたことが判明し、同署は3人を補導した。このうち1人が電車に向かって4個の石を、もう1人が1個の石を投げたことを認めているという。
JR東日本八王子支社によると、同電車を含む上下6本が運休、11本が最大14分の遅れとなり、約1万3000人に影響が出た。(読売新聞)
まぁこの事件、自分も結構良く知っている場所で起きているんですけどね・・・
そんなことはさておき、今回の事件、補導された3人の児童は「通告」を受ける可能性があります。
「通告」と言う言葉、我々大人の世界では車などでいわゆる「青キップ」を切られた時に、後日正式な形で公示されることによる「通告」なんかはなじみがあると思いますが・・・(そういう自分も大学生の時に速度違反できられて・・・((+_+))今でも青キップは戒めのために持っていますよ。)
しかしここで言う「通告」は児童福祉法に定められているものです。児童福祉法には、次のように定められています。
児童福祉法第25条
要保護児童を発見した者は、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。ただし、罪を犯した満14歳以上の児童については、この限りでない。この場合においては、これを家庭裁判所に通告しなければならない
今回の報道では、少年の罪状について「器物損壊」と「傷害」が上げられています。その他にも実際に運行している電車に対して投石し、その結果として「窓ガラスが割れた」と言うことは「ガラスを破壊」と言うことになり、「汽車転覆等及び同致死」(いわゆる「列車往来妨害」)にも該当する可能性があります。
刑法第261条(器物損壊等)
他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。
刑法第204条(傷害)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
刑法第126条(汽車転覆等及び同致死)
現に人がいる汽車又は電車を転覆させ、又は破壊した者は、無期又は3年以上の懲役に処する。
今回の行為、こうやって見ると非常に「重罪」です。しかし刑法には「責任年齢」の規定もあります。
刑法第41条(責任年齢) 14歳に満たない者の行為は、罰しない。
今回の少年の年齢は11歳であり、刑法による刑事罰を問うことはできません。その一方で少年法の適用となります。そして少年法には、次のような規定があります。
少年法第6条(通告)
家庭裁判所の審判に付すべき少年を発見した者は、これを家庭裁判所に通告しなければならない。
2 警察官又は保護者は、第3条第1項第3号に掲げる少年について、直接これを家庭裁判所に送致し、又は通告するよりも、先づ児童福祉法による措置にゆだねるのが適当であると認めるときは、その少年を直接児童相談所に通告することができる。
3(省略)
ちなみに「第3条第1項第3号に掲げる少年」と言うのが、ぐ犯行為少年・触法行為少年・犯罪少年になります。ちなみにそれぞれの意味として、
・ぐ犯行為少年;将来罪を犯し、刑罰法令に触れる行為をする虞のある少年(虚言癖・金銭持ち出し・家出など)
・触法行為少年;14歳未満でで刑罰法令に触れる行為をした少年
・犯罪少年;罪を犯した14歳以上20歳未満の少年
何だか法律ばっかりの話になってしまいましたが、本題はここからです。
もう一度今回の事件に戻ると、今回の事件は「11歳の少年が刑罰法令に触れる行為をして、警察に補導された」と言うことになります。上記の分類からは「触法行為少年」となります。さて、ここで警察はこの少年をどのように処分するかによります。本来、刑罰法令に触れる行為をしたのですから、当然刑事処分を受けるのですが、責任年齢により、少年法での処分となります。少年法では原則「家庭裁判所の審判に付す」(少年法第3条)ことになりますが、先述の少年法第6条により警察から児童相談所に通告が行われた時、そこで初めて「児童相談所」が出ることになります。
本件について通告を受けた児童相談所は、次の対応を取ります。
第26条 児童相談所長は、第25条の規定による通告を受けた児童について、必要があると認めたときは、次の各号のいずれかの措置を採らなければならない。
1.次条の措置を要すると認める者は、これを都道府県知事に報告すること。
2.児童又はその保護者を児童福祉司若しくは児童委員に指導させ、又は都道府県以外の者の設置する児童家庭支援センター若しくは都道府県以外の障害児相談支援事業を行う者に指導を委託すること。
3~5.(省略)
2 前項第1号の規定による報告書には、児童の住所、氏名、年齢、履歴、性行、健康状態及び家庭環境、同号に規定する措置についての当該児童及びその保護者の意向その他児童の福祉増進に関し、参考となる事項を記載しなければならない。
第27条 都道府県は、前条第1項第1号の規定による報告又は少年法第18条第2項の規定による送致のあつた児童につき、次の各号のいずれかの措置を採らなければならない。
1.児童又はその保護者に訓戒を加え、又は誓約書を提出させること。
2.児童又はその保護者を児童福祉司、知的障害者福祉司、社会福祉主事、児童委員若しくは当該都道府県の設置する児童家庭支援センター若しくは当該都道府県が行う障害児相談支援事業に係る職員に指導させ、又は当該都道府県以外の者若しくは当該都道府県以外の障害児相談支援事業を行う者に指導を委託すること。
3.児童を里親に委託し、又は乳児院、児童養護施設、知的障害児施設、知的障害児通園施設、盲ろうあ児施設、肢体不自由児施設、重症心身障害児施設、情緒障害児短期治療施設若しくは児童自立支援施設に入所させること。
4.家庭裁判所の審判に付することが適当であると認める児童は、これを家庭裁判所に送致すること。
社会を震撼させてきた一連の少年事件は、すべてこのような経過を経て処遇が決まっています。ですから殺人などの重大事件を起こしても最初は「児童相談所」に通告され、その結果第27条の「家庭裁判所送致」と言う決定がなされ、少年院なり児童自立支援施設措置となっているのです。
決して大きく触れられてはいませんが、こういったことも児童相談所の仕事の1つなのです。
(※法令文は一部省略しています。)
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