コトバ★「知的障害」
今回のコトバは「知的障害」。
以前「障害者」として取り上げたことがありますが、やはり検索ワードの結果から、今回は知的障害に絞って取り上げたいと思います。
★「知的障害」の定義
以前に触れた「障害者」でも話しましたが、「知的障害」に対しては法的な定義がありません。その背景には「知的障害」と言うものが実体として目に見えない・見えにくいものであるために、一線を持って区切ることができないことが背景にあるのではないか、と推測しています。
そのため、知的障害の「概念的定義」を用いる時に使われる定義が、厚生労働省が実施している「知的障害児(者)基礎調査」が示す定義です。この調査においては知的障害の定義として「知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に支障が生じているため、何らかの特別の支援を必要とする状態にあるもの」としており、「知的機能の障害」と「日常生活能力(日常生活に支障が生じている状態)」の双方に該当する場合に「知的障害」とするとされています。
ちなみに「知的機能の障害」と「日常生活能力」については次のように定義されています。
・「知的機能の障害」;標準化された知能検査(ウェクスラーによるもの、ビネーによるものなど)によって測定された結果、知能指数がおおむね70までのもの。
・「日常生活能力」;日常生活能力(自立機能、運動機能、意思交換、探索操作、移動、生活文化、職業等)の到達水準が総合的に同年齢の日常生活水準(別記1)のa,b,c,dのいずれかに該当するもの。(※別紙1は省略→つまり同年齢と比較して判断するということ)
★知的障害の実態
最新の統計「知的障害児(者)基礎調査」(平成12年)によると、知的障害児が約9万3600人、知的障害者が約34万2300人の合計約43万5900人です。なお、この数は「知的障害児(者)基礎調査」における「知的障害の定義」に該当する人及びこの調査に回答した人から明らかになった数で、いわゆる「療育手帳」所持者の数ではありません。
【知的障害児】-9万3600人
☆年齢層
0~4歳・・・・・・1万2400人
5~9歳・・・・・・3万0100人
10~14歳・・・3万3100人
15~17歳・・・1万8000人
☆障害程度
最重度・・・1万8000人(構成比19.1%)
重度・・・・・3万0700人(32.8%)
中度・・・・・1万7800人(19.1%)
軽度・・・・・1万8300人(19.5%)
不詳・・・・・9000人(9.6%)【知的障害者】-34万2300人
☆年齢層
18~19歳・・・1万5600人
20~29歳・・・7万9800人
30~39歳・・・5万0700人
40~49歳・・・3万7700人
50~59歳・・・2万2500人
60~64歳・・・5600人
65歳以上・・・・9200人
☆障害程度
最重度・・・2万6700人(構成比12.1%)
重度・・・・・5万9700人(27.0%)
中度・・・・・5万7400人(25.9%)
軽度・・・・・5万2100人(23.6%)
不詳・・・・・2万5300人(11.4%)
また知的障害者のうち何らかの形で就労している人は全体の40.3%に当たる約13万8100人であり、そのうち半数以上は通所施設を含む作業所で就労しています。また一般企業などの「正規の職員」として勤務しているのは就労者数の19.6%(約2万7000人)となっています。
★療育手帳制度
知的障害者に対しての「手帳制度」として、「療育手帳」があります。そもそも「手帳制度」は「福祉の措置を受けるための根拠」として、それを証明するために設けられたシステムで、その始まりが「身体障害者手帳」と言えます。身体障害者手帳は「身体障害者手帳の交付を受けている人」を「身体障害者」として法的に認めており、手帳を申請交付を受けていない人は「身体に障害のある人」と分けて考えられています。
以前の「コトバ★障害者」でも簡単に触れましたが、身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳はそれぞれ「身体障害者福祉法」「精神保健福祉法」の条文に規定されています。しかし療育手帳は法律に基づいた手帳ではなく、「厚生省通知」による制度です。ですから療育手帳に「法的根拠」はないのです。
この「療育手帳」が「国の制度」として制度化されたのは昭和48年のことですが、国が制度化される以前に既に東京都が昭和42年に「愛の手帳」として制度化しており、知的障害者に対する手帳制度としては国よりも自治体のほうが先行していた形になります。そのため国の制度はこれを「追随する」形で制度化しており、また「療育手帳」と言う名称に関しても東京都が先行して行っていたため「手帳の名前を問わない」と言う形で制度化されています。住んでいる都道府県によって療育手帳の名称が「愛の手帳」「みどりの手帳」などと異なっているのは、このためです。
身体障害者手帳の場合は先述した「福祉の措置」としての根拠となるため、様々な制度・手当や免除を受けるためには「手帳の交付」が必要な要件となっています。しかし療育手帳の場合は、必ずしも「手帳の取得」が制度・手当・免除を受けるための要件とはなっていません。ただ実際には手帳によって特別障害者手当の受給や各種減免、JRなどの運賃割引に用いられているため、事実上の「根拠」にはなっている部分はあります。
念のため申し上げますが、身体障害者手帳や療育手帳など、障害を負ったことによって「必ず取得しなければならない」と言うものではありません。あくまでも「手帳の申請・取得」は自由であり、取得しなくても構わないのです。ただし取得しなければ様々な「福祉の措置」が受けられない、と言うことだけであり、必要ないのであれば、申請しなくても良いのです。
参考文献
新版社会福祉士養成講座3 障害者福祉論【第2版】(中央法規)
コメント
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welfare-net21のsudaです。
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投稿: suda | 2005.03.06 18:03