コトバ★「児童福祉司その2」
昨日「児童福祉司その2について~」と書いたけど・・・
児童福祉司のことについて新聞には載っていたので、1日遅れの「コトバ」として触れることに。
そのため、今回は「児童福祉司その2」です。
Yahoo!ニュース「児童福祉司を助産師・看護師にも・・・虐待相談増加で」
厚生労働省は8日、全国の児童相談所に常勤する児童福祉司の資格要件を緩和し、保健師や看護師などに門戸を広げることを決めた。
児童虐待に関する相談件数が増加する一方で、児童福祉司の数が全国的に不足しているためだ。省令を改正し、4月から実施する。
児童福祉司は、都道府県と政令市が採用する専門職員で、虐待の通報を受けて子どもの保護が必要かどうか判断する。親へのカウンセリングなども担当する。現在は、児童福祉司の養成校に指定された学校を卒業するか、大学で心理学などを専攻し、卒業していることなどが採用の際の条件となっている。
省令改正後は、保健師、助産師、看護師、保育士、教員などでも1―2年の実務経験があれば、児童福祉司として都道府県・政令市が採用できるようになる。ただ、3か月程度の講習を受けることを義務付ける。
正直この決定は、社会福祉士として微妙な心境。たしかに様々な分野からアプローチすることは必要だと思うし、特に保育士に関しては児童福祉施設や児童相談所における一時保護所において実際に従事しているのだから、児童福祉司の任用用件に入って当然であると思う。
ただ、その範囲をどこまで広げるのか・・・
いや、児童福祉司の問題は「範囲の拡大」で済むような問題ではないと思う。
メインの「御岳の山」から来られている方は既に見ているかもしれないけど、自分が学生だった時に現場実習で児童相談所に実習に行ったときのことを「在学中の現場実習」としてまとめてある。その中には当然児童相談所のレポートも書いてあるのだが、その中の1つにある「裏実習ノート」に児童相談所の現状について触れたことがある。このレポートを書いたのは3年前のことだけど、多分状況はそんなに変わっていないと思うから、あえてもう1度言おうと思う。
なぜ児童福祉司の数が不足しているのか?
ハッキリ言ってしまえば、それは「財政不足」だから。児童福祉司の任用用件については「児童福祉法」で定められており、現在のところ「児童福祉司の任用用件」としては、次のように定められている。
(児童福祉司)
第11条 都道府県は、児童相談所に、事務吏員又は技術吏員であつて次の各号のいずれかに該当するものの中から任用した児童の福祉に関する事務をつかさどるもの(以下「児童福祉司」という。)を置かなければならない。
1.厚生労働大臣の指定する児童福祉司若しくは児童福祉施設の職員を養成する学校その他の施設を卒業し、又は厚生労働大臣の指定する講習会の課程を修了した者
2.学校教育法(昭和22年法律第26号)に基づく大学又は旧大学令(大正7年勅令第388号)に基づく大学において、心理学、教育学若しくは社会学を専修する学科又はこれらに相当する課程を修めて卒業した者
3.医師
3の2.社会福祉士
4.社会福祉主事として、2年以上児童福祉事業に従事した者
5.前各号に掲げる者と同等以上の能力を有すると認められる者であつて、厚生労働省令で定めるもの
で、5の「厚生労働省令で定めるもの」としては、「児童福祉法施行規則」において次のように定められている。
第1章の2 児童福祉司
第1条の6 法第11条第1項第5号に規定する厚生労働省令で定めるものは、次の各号のいずれかに該当する者とする。
1.学校教育法(昭和22年法律第26号)による大学において、心理学、教育学若しくは社会学を専修する学科又はこれらに相当する課程において優秀な成績で単位を修得したことにより、同法第67条第2項の規定により大学院への入学を認められた者
2.学校教育法による大学院において、心理学、教育学若しくは社会学を専攻する研究科又はこれらに相当する課程を修めて卒業した者
3.外国の大学において、心理学、教育学若しくは社会学を専修する学科又はこれらに相当する課程を修めて卒業した者
4.社会福祉士となる資格を有する者(法第11条第1項第3号の2に規定する者を除く。)
5.精神保健福祉士となる資格を有する者
6.社会福祉主事たる資格を得た後の次に掲げる期間の合計が2年以上である者
イ 社会福祉主事として児童福祉事業に従事した期間
ロ 児童相談所の所員として勤務した期間
7.社会福祉主事たる資格を得た後3年以上児童福祉事業に従事した者(前号に規定する者を除く。)
こう考えてみると、現在社会福祉士登録者数は約4万8000人。これに医師や心理学・教育学・社会学の学士で卒業した人、さらには精神保健福祉士やその他の条項に該当する人を含めたら相当な数になる。もちろんすべての人が児童福祉に携わるわけではないが、その数を差し引いたとしても、結構な数であるはず。
だから単純に考えたら、「児童福祉司になることのできる人数」は多いはず。これに看護師や保健師、助産師に保育士などを合わせたら・・・これまた相当な数になる。
と考えた場合、厚労省は「児童福祉司のなり手が少ないから、範囲を拡大した」と考えるのかな?
単純計算をすれば児童福祉司任用資格を持つ人数はそれなりにいるはず。にもかかわらず範囲拡大をするのであれば「なり手が少ない」のか、あるいは「今の任用資格者では役不足」と考えてしまうのは私だけだろうか?もし後者の場合であれば、社会福祉士として情けないことであり、もっと研鑽を積む必要がある。これは社会福祉士や福祉士会に対して「もっと勉強しろ」と言っているのと同じことなのかな?
話がだいぶそれてしまったが・・・
私は児童福祉司不足が単純に「範囲拡大」では解決しないと考えている。問題の本質は「財源」にあるのではないか、睨んでいる。ぶっちゃけ話、自分が児童相談センター(法的には「中央児童相談所」と呼ばれるところ)に見学に行った際、当然見学をした学生からは「どうして児童福祉司の人数が増えないのか」と言った疑問がでる。それに対して職員の人は「児童福祉司に対する予算が出ない」と本音の答えを出した。その理由として、他の道府県では児童福祉司増員の際に予算配分が行われ、それに基づいて児童福祉司の増員を図っているが、都の場合には仮に児童福祉司を増員しても、増員した分の予算配分は行われないため、それならば増員しない方が・・・と言うことになっているとのこと。つまり「都は裕福だから、自前で予算を組んでください」と言うことを間接的ながら国から言われている、とのことらしい。
だから問題の本質を「財源」と言っているのは、ここにある。
どこの都道府県も財源的にはかなり厳しいはず。だから人材的な面で言えば、採用しようと思えば十分に採用できるはず。「熟練」と言うことを挙げるのであれば、中途採用・経験者採用と言う形で選考を行うこともできるはず。だけど実際にはそれが行われていない。少なくとも、東京都の場合は・・・福祉職として。
まぁあくまでも「財源」にこだわっているのは理由の1つと言うことであって、もちろん他の理由も十分にあると思う。だけど先立つものがなければ、物事は何も進まない。一般財政ではなく、特別財政として児童福祉司増員に対する施策を考えてみるのも、1つの手段であるはず。
児童福祉司の現状はかなりハードだから、もう少し真面目に考えましょうよ、厚労省と政府さん。
(補足、引用に関して)
以前に木村さんの記事(『引用』は『リンク』に対する冒涜なのか?)と言う記事に対してTBを出して色々と言いましたが、自分のスタンスとしてはニュース記事などを参考にして書く場合は、参考にした元記事へのリンクをつけると共に、記事の全文を書くようにしています。その理由は、リンク切れになってしまった場合、その記事がどのような内容であったのかがわからなくなってしまうため、記事全文を書いています。このようにしておけば、仮に記事がリンク切れになってしまっても、どのような記事を元にコメントを書いたのかがわかる、と考えているため、このようにしています。
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コメント
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私は都立病院で看護師です。友人にも東京都職員(事務職)がいますが、人事異動の際、児童相談所に配属が決まったとなると、貧乏くじを引いてしまったと思う職員も多いようです。また実際、児童相談所に配属され、働いていた職員の方も、早くこの職場を抜け出したいと最近やっと児童相談所から他への移動が叶った、という声を聞いています。つまり専門職で賄い切れず、事務職で対応している状況で、コミュニケション能力のない事務職が配属されていること多いようですね。
投稿: mama | 2010.03.02 11:26