「介護保険」と「支援費制度」の統合?
今日はもう1本
Yahooニュース「介護保険の負担年齢引き下げ、見送りの公算」
介護保険制度改革の焦点である「負担と給付の対象者の範囲の拡大」について、2006年度からの実施は見送られる公算が大きくなった。
負担を若者に求め、給付を障害者らに広げることに対し、与党や関係団体の間で慎重論が強いためだ。厚生労働省は早期実施を目指しているが、来年2月に予定される改正法案の国会提出までに、実施へ向けた合意形成を図るのは困難な情勢となっている。
改革では、保険料負担者を現行の40歳以上から20歳以上などに引き下げ、サービス受給者も同じく原則65歳以上から0歳以上などに広げて、若い障害者らも保険の対象とするかどうかが検討されている。
これに対し、自民党社会保障制度調査会長の丹羽雄哉・元厚相は19日、破たん状態にある障害者の支援費制度と一緒にすれば、「介護保険そのものがおかしくなる」と、否定的な考えを強調した。
その前日に改革の基本方針をまとめた自民党社会保障制度調査会介護委員会(鴨下一郎委員長)でも、「若者に負担を求めるのは無理」などの慎重意見が相次ぎ、拡大については年末まで結論を先送りすることにした。
党内には、拡大に賛成する意見もあるが、それも、「将来的な課題」(同委員会メンバー)との認識が強い。
「より普遍的な制度へ向けて努力する」との方針を先月末の党大会で掲げた公明党でも、「実現には準備がいる。早くて2009年度ではないか」(同党幹部)との声が聞かれる。(読売新聞、11月21日14時9分)
Yahooニュース「<介護保険>障害者福祉制度との統合見送りへ」
自民党は19日、05年の介護保険制度改革について、保険料を負担する年齢(現行40歳以上)を20歳以上などに引き下げるとともに障害者福祉制度の一部を統合する焦点の制度改定を今回は見送る方向で調整に入った。税金でまかなっている障害者福祉サービスを保険制度の中に組み込むことが妥当かどうかの議論が不足しているというのが理由で、公明党も同調する方向だ。厚生労働省はなお実施に意欲を見せているが、経済界も新たな負担に強く反発している。
両制度の統合と負担層の拡大は00年度の介護保険発足時からの課題。厚労省は「高齢者、障害者を区別せず、国民全員で支える必要がある」と主張してきた。しかし、改革には障害者支援費制度の慢性的な財源不足を補う思惑もあった。このため、「財源対策の側面が強すぎる」との批判が強まり、自民党は今回改革での実施は見送るべきだとの意見が大勢になった。
これに関連して、自民党社会保障制度調査会長の丹羽雄哉元厚相は19日、東京都内で「支援費制度が破たん状態という理由で統合をもくろむなら、介護保険そのものがおかしくなる」と述べた。
統合以外の改正内容には、軽度の要介護者に筋力トレーニングなどをさせることで、介護の必要度合いを高まらないようにする新・予防給付の創設▽介護保険施設入所者の居住費(家賃、光熱費など)を保険給付から外し、原則全額自己負担とする――などが盛り込まれている。これらは与党も了承しており、改正法案は厚労省案から支援費制度の一部統合と負担年齢引き下げが抜け落ちる形となる見込みだ。(毎日新聞、11月20日3時4分)
個人的な見解として。
基本的に支援費(支援費制度)を介保(介護保険制度)に統合することは反対。
以前に「3障(身体障害・知的障害・精神障害の3つをあわせた通称名称)の施策を1本化」する記事があった。(詳しい内容についてはこのblogでは取り扱わなかったので、まろくんさんのblog「障害福祉~かざぐるま」の「身体・知的・精神の3施策を一本化~障害福祉サービス法」を参考にしてください。)その記事の中でも「介護保険法への統合を視野に入れて~」ということが言われていた。
で、何故反対か・・・と言うと、「高齢者」と「障害者」を本当に一緒くたに取り扱っていいのだろうか、と考えているから。もっと言えば一口に「障害者」と言っても、その障害の種別や軽重は高齢者以上に多様である。例えば「身体障害者」と「知的障害者」を比較した場合、身体障害者が必要とするニーズと、知的障害者が必要とするニーズは当然異なってくる。うちの親も身体障害者であるが、身体の場合には専ら「場所の移動」と言う面で支援が必要となる。一方知的の場合には「生活の移動」と言う面で必要となる。
何が言いたいのか・・・身体の場合には「~に行く」と言う目的が先に存在した上で移動行為を行っている。例えばうちの親の場合には「人工透析を行うために、病院に行く」「透析が終了したから、自宅に帰る」のように。
一方知的の場合には「~に行きたい」と言う願望目的が先行することがある。「~に行きたいけど、行ったことがない」とか、そもそもの経験がないこともある。この2つの「移動」、当然同じ「移動」と考えてしまうのには、若干無理があるのではないだろうか。
更に、現在介護保険制度では「ケアマネジメント」の手法が採用されており、制度利用に関しては「ケアプラン」の作成が前提となっている。一方支援費制度の場合は現在のところ、ケアマネジメントは必ずしも必要とされていない。そのため障害者ケアマネージャー(以降ケアマネ)の数は高齢者ケアマネに比べてはるかに少なく、障害者ケアマネの資格取得に関しても高齢者ケアマネのように頻繁に行われていない。(ぶっちゃけ話をすれば、高齢者ケアマネは年1回試験が「公」になって行われているが、障害者ケアマネに関しては行われていない。ある自治体では「役所の職員だけ」に障害者ケアマネの試験を受けさせているところがあり、外部からの問い合わせに関しては「まだやっていませんよ」と答えているところもあるらしい・・・もっとも「役所の職員に先に取らせてから・・・」との考えらしいが。)
にもかかわらず、支援費を介保に統合した場合、障害者はどのように利用をすればいいのだろうか?障害者もケアマネが必須になるのであろうか?もしそうであった場合、障害者ケアマネが少ない中で果たして機能するのであろうか?「高齢者ケアマネがケアプランを・・・」なんて考えを持つ人もいるかもしれないが、そんなことをやってしまったら障害者にとっては逆にマイナスとなる。先に「一口に障害者といっても~」で触れたとおり、当然「高齢者」と「障害者」ではニーズが異なる。そしてそれ以上に「特性」も異なる。特性が異なれば、ケアマネジメントの視点も当然に子なることは言うまでもなく、高齢者の視点で障害者にマネジメントしたケアプランが合うはずがない。もちろんその逆のパターンも同じ、合う訳がない。
そして最後に・・・財源の問題。
ちゃんと元厚生労働大臣はちゃんと指摘している通り、支援費の財源がヤバいから統合・・・なんて安直な考えをしたら、共倒れになるのは当然のこと。さらに支援費制度の場合は「応能負担」(収入に応じて保険料・利用料を負担する方式)であり、多くの人が負担なしあるいは低額な負担で施設などを利用している。しかし介護保険に統合された場合は「応益負担」(収入に関係なく、利用状況に応じて利用料などを負担する方式)となり、所得に関わらず負担が発生することになる。
また個人的な見解から述べれば、自分のいる「知的障害者授産施設」は法目的として「知的障害者授産施設は、18歳以上の知的障害者であつて雇用されることが困難なものを入所させて、自活に必要な訓練を行うとともに、職業を与えて自活させることを目的とする施設とする。」とあり、一言で言えば「自活訓練」のための施設である。なのに介護保険のように「利用量に応じて」の考えを持ち出したら、あたかも「訓練料」を支払わせるの?って感じにもなる。当然授産施設は「デイサービス」ではないのだから、「利用量」と言う考えは馴染まない。
兎にも角にも、今の状態で支援費と介保の統合は反対である。
もっと互いの制度をきちんと整備した上で統合をしなければ、結果として不利益を被るのは「制度利用者」、即ち高齢者と障害者である。
もっと真剣に真面目に、議論をして欲しいものです。議員さんも、官僚も。
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