児童福祉「士」なんだから・・・
今日はおまけ。
6連休だからタイトルも「6連休その~」で続けようと思ったけど、やっぱりこれを見たら看過できない。ただし、今回は非常に長文の記事なので、覚悟の上で。
yahooニュース、「相談所の対応に問題」 兄弟殺害で県児童家庭課長
栃木県小山市の兄弟殺害事件を受け、栃木県児童家庭課の広沢敬行課長が21日記者会見し「県南児童相談所の対応に問題があった。指導監督の責任を感じている」と述べた。
広沢課長は、保護した兄弟を父親に引き渡した7月9日の時点では「同居人からたまたま暴力を受けただけで、虐待事案ではない」と認識していたことを明らかにし「1年前から相談を受けていたため、兄弟、親子について予備知識があり(同居人の暴力は)父親の抑止力で防げると考えた。最初の見立てを誤った」と述べた。
兄弟を帰した後、祖母に電話しただけで家庭訪問しなかったことや、病院に行くよう伝えながら確認しなかったことについては「父親の存在や祖母の言葉を過大評価し、相談所職員一人ひとりの危機意識が十分でなかった」とした。(共同通信、 9月21日20時20分)
yahooニュース、「危機意識なかった」=児童相談所の対応で甘さ認める-幼い兄弟殺害事件・栃木県
栃木県小山市でAちゃん(4つ)、Bちゃん(3つ)の幼い兄弟が同居の自称会社員C容疑者(39)=殺人容疑で再逮捕=に殺害された事件で、同県児童家庭課は21日、県南児童相談所の対応を検証した中間報告を発表した。会見した広沢敬行課長は「所員に危機意識がなかった。対応に問題があったのは事実」と認めた。
また、県の児童福祉士が国の基準で4人足りないことも認め、10月から2人増員して27人の体制とすることを明らかにした。 (時事通信9月21日21時2分)
別に今更児相の対応についてとやかく言うつもりはない。
起きてしまったことは事実であるし、あくまで報道されているのは「結果論」なんだから。
ただし、児相に関してはこのblogでも、メインのHPの「現場実習」のページでも再三述べている。だからあえて言おう。
「そんなに児相のことを責められるのか?」
余計なことは言わない。先述の記事を参考にして欲しい。
児相の現状は、理解しているのであろうか?昔であれば児相はあまり世間から注目されることは少なかった。しかし児童虐待の問題が社会問題化するにつれて、児童相談所も注目されるようになった。しかし注目の内容は「こう言う機関があるんだぁ・・・」と言うものより「児相がやって来る」という印象の方が強かったのではないか、と思う。児童相談所は本来「相談機関」であり、いわば生活保護の実施などを行う「福祉事務所」と同じ性格を持つものである。しかしながら児童虐待の問題について児童相談所が中心となって担う際に「立入調査権」と言うものがあまりにも大きく出すぎてしまったため、児童相談所がある種の「司法機関」的な性格として錯誤された部分があると考える。
「立入調査権」は児童虐待の問題が表面化してから生まれたもの・・・ではなく、以前からあったものである。それは「児童福祉法」において規定されている。
第27条 都道府県は、前条第1項第1号の規定による報告又は少年法第18条第2項の規定による送致のあつた児童につき、次の各号のいずれかの措置を採らなければならない。
1.(省略) 2.(省略)
3.児童を里親(保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認められる児童を養育することを希望する者であつて、都道府県知事が、適当と認める者をいう。以下同じ。)若しくは保護受託者(保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認められる児童で学校教育法に定める義務教育を終了したものを自己の家庭に預かり、又は自己の下に通わせて、保護し、その性能に応じ、独立自活に必要な指導をすることを希望する者であつて、都道府県知事が適当と認めるものをいう。以下同じ。)に委託し、又は乳児院、児童養護施設、知的障害児施設、知的障害児通園施設、盲ろうあ児施設、肢体不自由児施設、重症心身障害児施設、情緒障害児短期治療施設若しくは児童自立支援施設に入所させること。
4.(省略)第28条 保護者が、その児童を虐待し、著しくその監護を怠り、その他保護者に監護させることが著しく当該児童の福祉を害する場合において、第27条第1項第3号の措置を採ることが児童の親権を行う者又は未成年後見人の意に反するときは、都道府県は、次の各号の措置を採ることができる。
1.保護者が親権を行う者又は未成年後見人であるときは、家庭裁判所の承認を得て、第27条第1項第3号の措置を採ること。
2.保護者が親権を行う者又は未成年後見人でないときは、その児童を親権を行う者又は未成年後見人に引き渡すこと。ただし、その児童を親権を行う者又は未成年後見人に引き渡すことが児童の福祉のため不適当であると認めるときは、家庭裁判所の承認を得て、第27条第1項第3号の措置を採ること。
二.(省略)第29条 都道府県知事は、前条の規定による措置をとるため、必要があると認めるときは、児童委員又は児童の福祉に関する事務に従事する吏員をして、児童の住所若しくは居所又は児童の従業する場所に立ち入り、必要な調査又は質問をさせることができる。この場合においては、その身分を証明する証票を携帯させなければならない。
「立入調査」の根拠は、第29条にある。そしてそれを裏付けるものとして第28条がある。参考までに、第27条第1項第3号についても今回は掲載をした。
立入調査は今になって始まったことではない。それを「虐待問題が大きくなったから」と言ってすべてを児相に投げつけているいるこの現状を解決することが、まず先決ではないか?既に「児童相談所の専門職員が足りない」という事実がハッキリしているのも関わらず、それを差し置いて「所員に危機意識がなかった」と言うのは、いかがなものであろうか?たしかに危機意識の欠如はあったかもしれない。しかし元をただせば、何が原因で危機意識が欠如してしまったのであろうか?その後の記事にもある「県の児童福祉士が国の基準で4人足りないことも認め、10月から2人増員して27人の体制とすることを明らかにした」と言うことが、原因であろう。もっとも、これから増員しようとしている児童福祉司が社会福祉士のような資格を所持している人であるのか、福祉経験豊かな社会福祉主事であるのか。しっかりとした知識と技術を持った人が携わらなければ、問題解決は程遠いだろう・・・
もっと言いたいことはあるが、長くなるのでここまで。
あ、1つだけ・・・このblogに載せるニュースは、すべて原典どおりに掲載。だから「児童福祉士」も原典どおりに掲載。もちろん「児童福祉士」が間違っていること(正しいのは言うまでもなく「児童福祉司」)は百も承知のこと。記事のレベルがこの程度なのだから、結局児相の実態もしっかり把握していないまま記事を書いているのではないか・・・と察している自分がいる。
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» 栃木・小山市の兄弟殺害の被告に死刑求刑 [easy life]
貧困から命を落とす。
または落とされる子供はこの国にもいます。 [続きを読む]
本日、事件に関係していた方の実名部分を修正しました。
アクセス解析の結果、事件関係者の方の名前で見えられる方が多くいることが明らかになりましたので、人権保護の観点から上記の措置を取らせていただきました。
投稿: Mitake | 2004.10.07 21:20